2009年1月23日金曜日

渋井陽子、原点回帰「力抜いて冷静に」

渋井陽子(三井住友海上)を指導する鈴木秀夫総監督は、元日から口ひげを伸ばし始めた。

「あのとき以来だな」

総監督の言う「あのとき」とは、2001年1月の大阪。21歳だった渋井は2時間23分11秒の初マラソン世界最高記録(当時)で優勝という鮮烈なデビューを飾った。

新世紀のヒロインとして脚光を浴び、04年ベルリンでは当時の日本新を出して制した。だが、その後、トラックでは一万メートルで昨年の北京五輪に出場するなど力を発揮するが、国内マラソンでは5戦して勝ちがない。

「自分自身に裏切られ続けてますね」。持ち味のスピードを生かして先手を奪っては、終盤に失速する敗戦パターン。2カ月前の東京国際は、最初の5キロを16分22秒という超ハイペースで入ったことがもろに響いた。「タイムを追いすぎて、ガツガツいきすぎた」

今回は「力を抜いて冷静に。駅伝のような走りをラスト10キロで出せたら」。後半勝負を念頭に置いているのだろう。

過去10戦の中で「ベストレース」と自負するのは、2時間20分を切ったベルリンではなく、初マラソンの大阪だ。

年明け早々、中国・昆明での合宿中に当時の映像を見る機会があった。「とにかく軽かった。力んじゃいかんなと思いましたね」。速い流れに苦もなく対応し、22キロ付近でロングスパート。後続を3分以上も引き離した。久しぶりに目にした「あのとき」の自分は、まばゆいばかりに輝いていた。

昆明での40キロ走は、いつもの平らなコースではなく、「平地は4分の1程度」(鈴木総監督)という起伏の激しい場所を選んだ。初マラソンに向け、みっちりと走り込んだコースだ。昨年12月には全日本実業団対抗女子駅伝で区間賞を獲得。初マラソン直前の00年以来の区間賞だった。総監督の口ひげもまた、ゲン担ぎに違いない。

「(初マラソンの)いいイメージを持って走りたい」

原点回帰で8年ぶりの優勝へ。「あのとき」を再現するおぜん立ては整っている。(細井伸彦)

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